あまりドイツ生活とは関係ない話を少し・・・
とりあえず、僕はMac Userなのですが、論文はMSWord(MS Office for Mac)で書いています。
教授にみてもらったり、その前に知人にドイツ語を添削してもらったり、奨学金支給者に報告書を書いたりする時に、結局MS Wordがデファクトスタンダードになっているので、一番無難だからです。
現在Appleから販売されている、「iWork」というMacOSX用のビジネス製品パックには、Page2という、Wordとほぼ互換性のあるワープロがありますが、残念ながら僕は持ってません。というか、僕が現在使用しているeMacを日本で買った段階(2004年7月)では、iWorkはまだ公開されていませんでした。
そういうわけでその時は、それまで長年使っていたエルゴソフトのEGWORD用文書を開くためにEGWORD13を、また今後の論文作成のためにMS Officeを購入し、現在は主としてMS Wordを利用しています。
しかしなんだね、結構めんどくさいのが、参考文献の管理です。
最初はExcelに記録していたんですが、1冊分の情報を1行に並べようと思い、著者・題名・雑誌などに発表されたものの場合は雑誌名、論文集の場合は書名、ついでにその場合には編集者、文庫化されたものとか、翻訳の場合は初出時のデータ、などを1列づつに分けて入れていくと、ものすごく横長になるし、ものすごくめんどくさい。
しかも、分野別にページを分けたりしたもんだから、あとから「え〜と、あの文献はどこだっけ?」と探すのもめんどくさい。
自動で題名順・著者順・年代順にソートしたり、書誌一覧を作成するマクロを組めば、もう少し使いやすくなるとは思ったのですが、そんなマクロを組むのはもっとめんどくさい。そもそも、まずVisualBasicから勉強しないといけないのでは、一体何を勉強しにドイツくんだりまで来ているのかがわからなくなってしまう、という問題にぶつかる。
そう言うわけで、もうちょっと何とか楽に文献管理できないもんか?と困っていました。
最初に思いついたのは、FileMakerを使って文献カードを作る、というものでしたが、当然(?)MacOSX用のFileMaker本体なんて高くて買ってません。
次善の方法としては、MacOSX10.3にバンドルされていたAppleWorksのデータベース機能を使って管理する、という方法も考えなかった無いわけではないですが、どうですか、今後のこととか考えたら、開けるアプリケーションがなくなっちゃった、なんてことになりかねないことないですか。まぁさすがにそこまでは無いにしても、そもそもドイツ語の神学論文用文献カードに適したテンプレートを作るのがめんどくさい。
もっと汎用性のあるデータベースで、文献管理としてテンプレートができあがってるようなもので、しかもカスタマイズが容易なもので、しかも今僕が使っているPanther(MacOSX10.3.9)上で動くものはないものか?と非常に身勝手な要求を誰にぶつけるでもなく抱き続けつつ、ただ漫然と山のように増えていく参考文献を眺めているだけであったのでした・・・。
しかし、そんなことも言ってられないので、意を決して(?)MacOSX用の文献管理用のアプリケーションをGoogleで検索。最初にヒットしたのは、ご本家Appleジャパンのサイトにあった医療分野の論文を作成する際のMacの活用方法についての説明。
それによれば、MS Office for Macと、Endnoteという文献管理アプリを使えば簡単だ、と書いてある。バージョンによっては、Wordのアドインとして、直接文献データベースを文中に引用するのに使えて、しかも文末に使用した文献一覧を作れるらしい。
へ〜Endnoteか〜、便利だね。安かったらこの際買おうかな、と軽い気持ちで、日本での代理店(日本語をサポートする製品を扱っている)である株式会社ウサコのEndnoteのサイトをみてみる。
なんと、1ライセンス用新規購入で¥52,290!(2007/5現在)
ひえ〜、MS Office本体より高いじゃないですか。アカデミック用も無いわけではないようですが、日本の大学生協などを通して買わないといけないようです。でもそれだと、僕は販売対象にはならないので意味がない。
日本語への対応をあきらめて、欧文のみの対応版にしたらもうちょっと安いんじゃないだろうか?と一縷の望みを抱き、Endnote本社のサイトからドイツの代理店のEndnoteのサイトを探して、みてみる。
う〜ん、たしかに日本語対応版よりもぐっと安いけれど、それでもダウンロードバージョンで175EUR(=28,000円ぐらい)[2007/5現在]。いや〜、どうかな〜、そこまで出資するぐらいだったら、今まで同様にExcelでちまちま文献表作った方がいいな・・・。
それに、Mac+Endnoteという組み合わせは、そもそも医療関係の研究者がよく使っているものらしく、そういう人向けに公開されているPubMedという論文データベースからデータ取得する機能とかついているらしい。
え〜、でもそんな機能使わないです。神学・新約学関係のWeb上に公開された文献データベースからデータを取ってこれるならば、それも便利かもしれないけれど。
とはいうものの、実はアメリカのイエズス会のWeston Jesuit School of Theologyというところが1956年以来、New Testament Abstract という書誌一覧情報誌を発刊しています。これは、新約各文書別(場合によってはその各章・各節)に、それぞれについて書かれた文献の紹介がなされているという、大変ありがたい雑誌です。
この狭い業界では当然誰もが利用しているのは言うまでもありません。
で、1985年以降の分については文献データベースを作っているそうで、現在はCD-ROMとしての販売(個人用$150、施設用$350)、あるいは施設単位でデータベースへのアクセス権限の販売などをしているそうです。
残念ながらAugustana Hochschuleは契約していないのでオンラインではアクセスできません(雑誌本体はもちろん全部揃っている)。
かわりにドイツ国内のTuebingen大学の神学論文データベースIxTheoとか、Regensburg大学の雑誌データベースとかを、検索用には使うようにとのことでした。
それはさておき、Endnoteでは値段的に話にならんということが明らかとなったため、とにかくフリーウェアそうでなければリーズナブルなシェアウェアで、文献管理データベースになるものはないかと思い、ここにきてついに真剣に探し初めることに。
日本語で検索してもめぼしいものはないので、英語で literature refference database manager とか、ドイツ語でBibliographie Verwaltungとか入れてGoogleで検索する。
とりあえず、BookendというMacOSX用の文献管理データベースソフトが見つかる。こちらは$99[2007/5現在]、とまぁそれなりに手の届くお値段。
そしてNisus Writerとは連携出来るらしく、MacUserでは利用している人も結構多いらしい。が、う〜ん、僕が使っているのはMS Wordだからねぇ。
[注]後日、サイトの説明をよく読み直したらBookendはMS Wordとも連携できるそうです。
どうせならもちっと安いのはないかい?と、フリーソフトで見つからないかと検索を続けるとどうもBibTeXという謎の(笑)キーワードを散見することに気付く。
そこで疑問が…。BibTeXってなに?
しかたがないのでWikipediaやら何やらを駆使して、TeX(テックもしくはテフ)というものの存在を21世紀もはや四捨五入して10年が過ぎたところで初めて知る。
TeXっていうのは、理系の研究機関ではもはや、それこそ20年以上前からデファクトスンタンダードになっている論文執筆形式(っていうのか)だそうです。恥ずかしながら知らんかった・・・。
1977年、アメリカの数学者Donald Knuthという人が自分の著作を再版するにあたり、モノタイプ印刷(活版印刷の一種)から写真製版に変わった際の仕上がりの悪さに失望して、特に数式を美しく表現するための、TeX(テックとかテフとか読むらしい)という組み版プログラムを作ったのが始まりとのこと。
その後、1984年このTeXのための文書を作成するためのマクロ、LaTeX(ラテックとかレイテックとか言うらしい)が発表され、作成するプラットフォームに依存せずに、美しい数式を印字できる文書形式として、UNIXを利用する人たちを中心に広く受け入れられいったそうです。
ちなみに日本では、1987年にアスキーが日本語と縦組みに対応したpTeXを開発、またその他にもNTT jTeXというのも開発されますが、現在日本語環境として主として利用されているのは、pTeX2eというVersionだそうです。
恥ずかしながら僕はこの度初めて知りました。いやー、こんなこと理系の人には常識なんだろうな…。
もちろんMacOSXでも使用出来るTeXならびにLaTeXが開発されています。
日本語pLaTeXをMacOSXにインストールするためのガイダンスについてはこちらやこちらがとても参考になりました。
またこちらに総合的な掲示板が作られていますし、wikiも作られています
で、つまり上記の謎(笑)のキーワード「BibTeX」とは、要するに、あくまでも文書の本体を構築するLaTeXの付加機能として、文献データベースのファイルから該当するデータを定められた書式にしたがって、文書の中に埋め込んだり、一覧を作ったりするためのマクロ(と言って良いのかな?)だったわけです。LaTeXと併せて文献データ管理に使うと、引用形式や一覧形式なんかも簡単に変更・統一できて、とても簡単らしい。
NII(国立情報学研究所National Institute of Informatics)が提供する学術コンテンツ・ポータルサイトGeNiiの中の、NII論文ナビゲータCiNiiでも、書誌データをBibTeX形式で書き出すことができるようになってます。
そしてさらに、このBibTeXは、書誌データそのものは、所定の形式に従って記述されたテキスト形式として保存されます(っていうかTeXそのものが、文書データをテキスト形式として保存するわけですが)。
だから、プラットフォームやアプリケーションに依存しない極めて汎用性の高いデータとなるわけで、これなら「このデータ開けるアプリケーションが無くなった困るな・・・」などと心配することもありません。
一瞬、「おっ、それなら論文もLaTeXで書いたら、後々、編集したり印刷したりするのに便利なのか?」と考えたのですが、どうもぱっと調べた感じだと、TeXは機種に依存しないようにするために、英語以外の言語(というかフォント)を利用するためには、コード化して記述しないといけないらしい。
いやたしかに、理系の論文、百歩譲って政治・経済分野だったら、本文は基本的に英語で、数式とか、図表とかをそれに組み込むというパターンだろうから、コード化したって別に問題ないだろうと思われます。
ちなみに経済学でBibTeXを使う場合に参考になるサイトはこちら。
また、日本の古典文学分野でLaTeXを縦組みで使うためのマクロを開発されている方がたがいることもわかりました。
でも、聖書学だと何かそう簡単にはいかない(ような気がする)。
考えただけでも、まず基本的にドイツ語で書くのでドイツ語特有の文字(ウムラウトとか)をコード化しないといけない(でもそれはそんなに大したこと無いと思う)。
一方、参考文献で英語の引用は多いのだけれど、それは全然問題ない。
ただし当然ギリシア語も使うので、それに対応しないといけない(ちょっと面倒くさそう)。ついでに言えば、ヘブライ語も使うのでそれにも対応しないといけない。このあたりで、既に変換コードは、Unicodeを使わないといけないことが決定。
参考文献には日本語文献もあるから、日本語も使えないといけない。
要するに、基本的に一つの言語系で文書を作成する時には、それを一括して管理するマクロ(日本語用マクロとか)があれば割と簡単なようなのですが、逆に「複数の言語系が混在するような文書に対応するのは面倒くさい、というか、そういう処理をするためのマクロが無いと困る」ということが判明。
そこで果たしてLaTeXは多言語混在環境に向いているのか?あるいは、多言語混在環境に対応するマクロは既に開発されているのか?という疑問が湧いてくる。
おっ!もしまだないなら、いっそのこと俺が作ってみるか?いっそのことUNIXから勉強しなおして!などと、はるか大昔コンピューター少年だったころの記憶がほんの一瞬甦るが、1nsec後ぐらいには大人の理性が「いや、べつにそれやりにドイツ来てるんとちゃうし」と、それを封印。
というか、前述のように、そもそも指導教授がMSWordを使っているため、中身を見てもらったりするときには、結局MS Wordにして(フォントとかも対応させて)渡さないといけない。
そういうわけで、現状では私がLaTeXで原稿を書くメリットがほとんど(というか全然)無いという事実に気付く。現状ではLaTeXで書くとしたら、単なる道楽ですな。
まぁでも、将来的には、聖書学分野でもLaTeXを導入していく方が、コスト的にも、コミュニケーション的にも有益でしょうね。今後、業界のスタンダートとなるを期待。
で、話はもう一度BibTeXへ戻る。
そういうわけでLaTeXで論文を書こうとしているわけではないので、いちいちテキストファイルで、定められた形式に従って書誌データを書き込んだりしたらめんどくさいし、後で引用しようとして探すのもめんどくさい。でも、後々のことを考えてBibTeX形式で文献管理をするのが多分ベストだろう。そういう、云わばどうにもならない事を、どうにかしようとして、とりとめもない考えをたどりながら、さっきから朱雀大路にふる雨の音を、聞くともなく聞いていたのである(by 芥川)
と思ったら、いや〜やっぱり世の中には便利なものを開発してくれる方がいるもので、BibTeX形式の書誌データを管理する、いわば書誌エディタ兼データベースビューワー、しかもMacOSX用が既に開発されていました。
僕が見つけたのは、BibCompanionとBibDeskという二つのBibTeXデータ管理アプリケーションです(しかもどちらもフリーソフト)。
これがまたどちらも大変すばらしく、大量の参考資料を一元的に管理し、必要な文献をリストアップしたり、書き出したりとかが、ものすごく簡単にできます。
近年、神学を含めた文系の領域でも紀要などに発表された論文の抜き刷りをPDF化して配布する例も徐々に増えてきましたが、これらのBibTeXエディタはPDFの管理までできるので、あとで「あれ、あのPDFデータはどこに保存してたっけ・・・」と探し回らなくても済むので大助かり。
BibDeskは、アメリカを中心としたボランティアによるチームが開発しており頻繁にアップデートされています。
ちなみに最新版は既に最低システム条件がTiger(MacOSX10.4)になってしまいましたが、Panther(MacOSX10.3.9)用に古いヴァージョンもまだ入手できたので、そちらを使用。
このBibDesk、文献管理の項目の設定や、書き出し形式の設定などの高い自由度がセールスポイント。
一方で、多言語を扱うためにはちょっと設定が必要とも言えます。
なぜかカタカナの「ブ」がどうしてもエンコードできないと、はねられたりしました。
あるいはこうした問題は、より新しいバージョンでは既に解決されているのかも知れません(僕はOSX10.3.9用のものしか使えないのでわからない)。
一方BibCimpanionは、日本の個人の方が開発された物で、日本語文献も問題なく処理でき、使い勝手も大変良いです。
但し、開発者自身が理工系の研究者であり、あくまでも自分が利用するために作った物だそうなので、あたりまえですが、文献管理の項目や書き出し形式が理工系のものが標準になっています。そのため、ドイツでの神学論文用にはかなりカスタマイズしないといけないのが面倒。
とりあえず、日本語文献は全体量としてはそんなに扱わないし、扱ってもこちらで提出する際にはどうせローマ字化して参考文献表を作ることになるので、BibDeskを利用することに。
とにかく、LaTeXを使うのではなくて、あくまでもMSWordで論文を作成することを前提にして、ドイツの一般的な新約学の論文の形式を参考にして、MSWord用に引用文献リストのテンプレートとか、脚注用の略号とかのテンプレートを作る。
LaTeXで本文を書いていれば、最終的にPDFとしてコンパイルする段階で、引用形式とかを一括で設定・変更できるのですが、MSWordなのでその辺がネックに。
MSWordに、BibTeXデータを読み込めるアドオン機能があったら便利なのになぁと思うが、ほとんど「日本のおでん屋で、ドイツのヴァイツェン・ビールが飲めればいいのに」というのと同じようなものだということに気づき、とりあえずあきらめる。
…と、思ったらやっぱりありました。イギリスの研究者がフリーウェアとして開発してました。試用後にまたレポートすることにします。
ということは、日本のおでん屋でバイエルンのヴァイツェンが呑める日も近いということか?(笑)
[注]試してみましたが、Widows用のadd onだったので、MacOSXでは動きませんでした。そういうわけで、あきらめずにMaxOSX用を検索を継続中。
しかしいずれにしても、BibDeskの導入によって、参考文献管理の利便性は飛躍的に向上。
いやーこれなら、200〜300冊ぐらいの文献をリストにするのも簡単だし、ゼミ発表用にそのうちの一部を選択して文献表を作るのも楽。
1冊毎にメモもつけておけるので、後から探す場合にも楽。
とりあえず今すぐ論文で使うもの以外の、将来的に使える教会関係の資料用PDFなんかもこれで管理出来る。
はっきり言ってすばらしいです。もっと早く出会っていれば良かった・・・。
というわけで、果たしてMacOSX+MSWord+ BibDeskの組み合わせは新約学論文の作成にどの程度有効なのか。あるいはどうすれば、より効率的に使えるのか。
今後も折りに触れて報告してまいりたいと思います。(そのうちまた続く)。
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